木曜日, 2月 19, 2009

杉浦日向子の『百日紅』(上下巻)を読む


先日、興奮しながらひと晩かけて読んだ。もう2、3度ひと晩かけてじっくり読むだろう。

『百日紅(さるすべり)』は文化11年(1814年)頃の江戸の町を舞台とした杉浦日向子の傑作漫画であり、漫画史上に残る名作のひとつといっても過言ではないだろう。上下巻で30ストーリー。

お話は葛飾北斎、その娘・お栄(葛飾応為)、居候と決め込む池田善次郎(後の渓斎英泉)、歌川門下にありながら北斎の画風を慕う歌川国直らを主人公に、彼らの人となりや生き様を活き活きとそして鮮やかに描いている。

この漫画には黒船騒ぎで揺れる前の江戸情緒が豊かに新鮮な空気で奏でられている。そして、読んでいるうちに、自分がまるで江戸の町にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。というのも、この漫画からは江戸の香りが漂ってくるからである。それは肥桶の匂いであり、堀を伝わってくる柳の風であり、居酒屋の安い酒の味であったりする。

私たち凡人は手塚治虫のように50年100年後の未来の歴史を想像することはとても無理だが、今から200年近く前の江戸を想像することは意外に容易い。それを実感させてくれる漫画でもある。

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