火曜日, 5月 25, 2021

第33回芝浜落語会

昨日(24日)は港区立伝統交流館で開かれた「第33回芝浜落語会」へ行ってきた。演目は下記の通り。

春風亭貫いち 「元犬」
春風亭柳枝  「崇徳院」
 〜 仲入り 〜
春風亭柳枝  「佃祭」

前座の春風亭貫いちは春風亭一之輔の4番弟子。「元犬」は前座噺(前座がよく高座にかける落語の基本的な演目(他に代表的なのが「寿限無」「転失気」「時そば」「たらちね」「道灌」など)の1つ。お話は犬のシロが人間の忠四郎になっての仕草を描くという江戸時代から語り継がれる滑稽噺。貫いちはこの噺を基本に忠実かつ、テンポよく抑揚をつけて進めていく。登場人物の声質の変化に少し不満が残るが、それをも凌ぐ威勢があり、笑いのツボも抑えている。昨今聞いた前座噺のなかでは傑出した出来。今後が楽しみ。

 

春風亭柳枝の2話では「佃祭」が秀逸だった。佃祭へ行った小間物問屋の次郎兵衛が佃島から戻る最終の渡し船にある女性のために乗ることができなかった。しかし、おかげで次郎兵衛は船が転覆するという災難から逃れる。ここまでが前半で、噺の展開は人情噺。後半は次郎兵衛が亡くなったと勘違いした長屋連中がお葬式を始めてしまう滑稽噺。こうした人情噺と滑稽噺が交わった演目は少ないと思う。

柳枝はこのニ面性のある噺を人情噺に重点を置くわけでもなく、また滑稽噺に重点を置くわけでもなく、メリハリを利かせながら噺を続ける。それは江戸の多様性ある人情を表現しているかのようであった。つまり、この噺は人情噺とか滑稽噺といった言葉では括ることができない江戸噺なのだと感じさせられた。お見事。

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