木曜日, 5月 05, 2022

上野鈴本演芸場5月上席夜の部(主任:春風亭一之輔)

昨日(4日)は上野鈴本演芸場で開かれている5月上席夜の部を聞きに行ってきた。本来ならば柳家権太楼が主任を務めるはずだったが、不整脈のために検査入院してしまったので、春風亭一之輔が急遽トリを務めることになった。なお、出演者と演目は下記の通り。客席はほぼ満席。なお私のお目当ては入船亭扇遊の五街道雲助のベテラン2人と、柳家喬太郎、橘家文蔵、春風亭一之輔の3人の中堅というか無頼漢たち。(笑)

金原亭駒平   「道灌」
柳家燕弥    「金の大黒」
鏡味仙志郎・仙成(大神楽)
鈴々舎馬るこ  「東北の宿」
入船亭扇遊   「たらちね」
米粒写経    (漫才)
五街道雲助   「狸賽」
柳家喬太郎   「親子酒」
  〜 仲入り 〜
林家正楽    (紙切り)
橘家文蔵    「千早ふる」
柳家小菊    (粋曲)  
春風亭一之輔  「唐茄子屋政談」

前座の金原亭駒平は落語家というより役者っぽいなあと思ったら、この人、本当に小劇場の役者を10年もやっていたらしい。柳家燕弥が演じた「金の大黒」は大家の子供が金の大黒を掘り起こしたことに始まる長屋の住人たちのドタバタを描く噺。この噺を聞くのは初めて。そのせいか面白いのか面白くないのかよく分からなかった。大神楽のあとは鈴々舎馬るこの「東北の宿」。この噺も初めて聞いたが、これは分かりやすく楽しく聞くことができた。

入船亭扇遊の「たらちね」はかなりコンパクトにまとめたものだが、扇遊の「自らことの姓名は〜」の長ゼリフの名前口上は柔らかくとても聞き取りやすい。漫才の米粒写経はお得意の都道府県紹介で今回はリクエストに応えて「北海道」「岡山県」「愛知県」を披露。五街道雲助の「狸賽」は恩返しのために狸がサイコロになるという噺。雲助はいつものように飄々と話を進める。この人の話には嫌味がなく気分が朗らかになる。柳家喬太郎の「親子酒」は禁酒を誓っていたはずの親子が共にその禁を破って、2人で話にならない話をするという滑稽噺。喬太郎は2人の酔っ払いを巧みにというか、もうほぼ酔っ払い状態で演じ分ける。これには場内抱腹絶倒。喬太郎の凄みを感じる。

林家正楽は紙切り一家。息子の林家二楽、孫の林家八楽も活躍している。正楽はお客のリクエストに応えて「双子のパンダ」「川開き」「人魚姫」を作る。「双子のパンダ」は見事な出来だった。橘家文蔵の「千早ふる」は在原業平の百人一首の意味を問うという噺だが、文蔵はなんと最後の「”とは”てぇのは?」をオチをトリの春風亭一之輔に振って噺を終えてしまう。これにはお客も唖然。柳家小菊は端唄や都々逸などの粋曲を得意とするお姐さま。三味線も歌声もいつも色っぽく、一度は寄席ではなく座敷のある会場で聞いてみたい。

トリの春風亭一之輔はマクラで「船徳」(?)をやるかのような話をしながら、文蔵に無茶振りされた「”とは”てぇのは?」のオチを披露する。お見事。「唐茄子屋政談」は若旦那が勘当されて唐茄子を売るという噺だが、前半は滑稽噺で後半は人情噺という作りで1時間近い大ネタ。一之輔は前半の唐茄子を売るという部分は情景描写を交えながら滑らかに話を進めるものと、後半の母子を助けるところはその心理描写に気を遣いながら慎重に話を進める。これがこの噺の難しさなのだろうか。サゲではこの噺の難しさを吐露する。それでも1時間の熱演は充分に聞き応えがあった。



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