火曜日, 11月 15, 2022

さん喬十八番集成 ~晩秋にて~@国立演芸場

昨日(14日)は国立演芸場で開かれた「さん喬十八番集成 ~晩秋にて~」を聞いてきた。出演者と演目は下記の通り。

柳家小きち  「金明竹」
柳家さん喬  「時そば」
柳家さん喬  「抜け雀」
 〜 仲入り 〜
柳家さん喬  「ちきり伊勢屋」

柳家小きちは柳家さん喬の一番下の弟子。角刈りのスポーツマン風の青年。これまでに2回ほど彼の噺を聞いているが、まだまだお客さんに飛び込んでいく力というか引き込む力がない。自分なりの噺家としての表現力をつけてほしい。

「時そば」は最も有名な落語の一つ。この噺を「一つ、二つ、三つ・・・、いま何刻(なんどき)だい?」と話す落語家がいるが、柳家さん喬はしっかり江戸風に「ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな、やあ、いま何刻だい?」と話す。そして、そばを啜る様も江戸っ子気質で演じる。これはまるで観客を終演後に蕎麦屋に誘うような話し方だ。絶妙というか秀逸な表現力であった。若手の落語家たちには是非とも見習ってほしい。

「抜け雀」も有名な落語の一つ。この噺をこれまで多くの演者で聞いてきたが、それらを軽く凌駕するような圧巻の高座。さん喬の情景描写には定評があるが、ここでも宿屋の主人と雀の姿が目に浮かぶようで、ショートムービーを見ているような錯覚におちいった。

「ちきり伊勢屋」は人情噺の大ネタ。話のあらすじはざっとこんな感じ。

質屋「ちきり伊勢屋」の若旦那伝次郎は数多くの縁談を持ち込まれ、それをどうするべきか易者の白井左近に決断を仰ぐ。ところが、左近は伝次郎が来年二月十五日に死ぬから縁談をするなと言う。そして、死ぬまでに人々に施しを行っていけば次に生まれ変わった時は長生きできるとつけ加える。

店に戻った伝次郎は、そのことを番頭に伝え、困っている人にお金を分けたり、質草をタダで戻したりといろいな施しを行う。そして、ある日大川に身投げしようとした親子を太鼓持ちの善兵衛と共に助ける。そして、その親子に名も告げず300両という大金を渡す。

運命の二月十五日、伝次郎は白装束で棺桶に入り、自宅で葬儀を終えて菩提寺まで運ばれるものの晴れて「生き返る」。その後は友人と共に駕籠かきをするが、その時に品川で助けた親子の娘おみよと再会する・・・。

私は初めて聴いた噺なのでよくわからないが、本来は前半と後半に分かれる噺らしく合計で1時間45分ぐらいかかるそうだ。それでもさん喬曰く「かい摘んで話して」1時間10分にまとめる。これでも大長講である。そして、何も言うことのない至福の時間だった。

この噺、12月によく演じられる「芝浜」ではないが、この日のサブタイトル「〜晩秋にて〜」ではないが、秋から冬にかけて演じるにはうってつけである。他の落語家も挑戦してみてはいかがだろうか。



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