金曜日, 1月 26, 2007

東京バレエ団『ザ・カブキ』(1/24公演)

私が東京バレエ団を見るようになって6〜7年経つが、残念ながら2002年と2004年の『ザ・カブキ』公演を見る機会を逸した。この作品はモーリス・ペジャールが歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』をもとに創作したバレエで、初演はもう20年前にもなる。これまでに海外14カ国で98回も公演していて東京バレエ団の代表作である。

主役の由良之助を演じる後藤晴雄は私のご贔屓ダンサー。彼はバレエ団に入団した翌年の19歳のときに由良之助に抜擢され、この作品は彼の代表作のひとつになっている。彼の踊りはよく優美とかしなやかと言われる。ただ、私には彼の舞いが時には蝶のように華麗であり、時には獲物を追い求める鷲か鷹のようにシャープさがあり、彼はその両局面をうまく使い分けながら踊っているように思える。というよりは、彼は常に舞台より十数センチ高い、我々には見えない “宙の舞台”で舞っているように思える。

東京バレエ団は男性陣が充実していることで知られている。そうでなくては忠臣蔵を題材とした創作バレエなど出来ようもない。『ザ・カブキ』はその特性をいかんなく発揮していて、討ち入りの場面での四十七士の群舞は圧巻である。これだけ踊れる男性がいるバレエ団など日本では他にないのではないだろうか。こうした男性群舞ならでの、舞台が客席に押し寄せてくる迫力を見ると、日本のバレエ界も人材は豊富になったんだなあと思う。東京バレエ団の未来、そして日本のバレエ界の未来は明るいようだ。

しかし、今回の公演で敢えて苦言を呈させてもらいたいことがある。音である。黛敏郎の音楽が悪いというわけではない。録音された音が古すぎるのだ。私たちの耳はすでにデジタル録音の音に慣れてしまった。特に劇場のようなところではアナログ録音の音は正直興ざめしてしまう。加えて録音技術が悪かったせいか管楽器(特にホルンやチューバ)の音が耳を覆いたくなるほどひどい。もし、今後もこの公演を行うようならば、お金はかかるだろうが再録を願いたい。

また、国内で公演をする際にはタイトルを『ザ・忠臣蔵』と改題した方が、地方の人たちには馴染みやすいのではないだろうか。全国の人たちにバレエの楽しさ、優雅さを味わっていただきたいので、親しみ易さ・分かり易さが大事なのではなかろうか。みなさん、いかがでしょうか。

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