日曜日, 7月 01, 2007

NHK交響楽団 アシュケナージさよなら公演

一昨日(29日)梅雨空の下、NHKホールでのN響第1597回定期公演に行ってきました。指揮はこの公演をもって音楽監督を退任するウラディーミル・アシュケナージ。彼は2009年よりシドニー交響楽団の音楽監督に就任予定になっている。

演目
ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調「田園」
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調

この日のNHKホールはなんか異様な雰囲気に包まれていた。チケットは完売。3677人も入るホールが2日連続完売なんて過去にあるのだろうか。理由はアシュケナージ最後の指揮ということもあるが、演目がベト6&ベト7ということもあるのではないだろうか。『のだめカンタビーレ』で一躍有名になったベト7。会場は若い聴衆がいっぱいである。先日の『N響★カンタビーレ』は休日の昼公演ということで家族連れが目立ったが、この日は音楽を専攻している学生や若いカップルがロビーに溢れていてとても華やかだった。いいです、こういう若い聴衆が増えたこと。先週のラフマニノフに続いて、N響の敷居も低くなったんだなあ、と実感した。

しかし、この日の演奏会には梅雨というか湿度という難敵がいた。NHKホールはもちろん空調はしっかりしている。それでも、客席は満席で蒸し蒸ししている。ビニール袋に入れているとはいえ濡れた傘が会場にあるので湿度は簡単には下がらない。楽器を少しでもかじったことがある人なら周知のことであるが、湿度は音の響きを悪くする。特に弦楽器は音が伝わりにくくなる。木管や金管にしても楽器内に水滴が溜りやすくなり、微妙な音の調整が難しくなる。もちろんティンパニーなどの太鼓も張りが悪くなり音が鈍くなってくる。

こうした最悪の状況下でベートーヴェンの第6番『田園』が演奏されはじめた。

第1楽章。あの有名なメロディが聞えてくる。誰もが息を飲み込み、その音色を聞く。案の定、弦の音色が悪い。特にヴァイオリンが・・・。演奏そのものは一糸乱れていない。テンポもリズムも悪くない。でも、あのメロディがモヤっとした空気のなかをさ迷っている。とても「いなかに着いたときの愉快な気分」という楽章名とはほど遠い気分であった。

第2楽章。ここは金管と木管の聴かせどころなのだが、音色がくすんでいる。「小川のほとり」で小鳥たちのさえずりを表現するはずなのだが、その小鳥がなんか鳥カゴに入っているようで、会場内には見えないバリアーが張られているのではないかと思ってしまう。そんな決して良いといは言えない雰囲気のなかで、アシュケナージは体を大きく揺すって、音を引きだそうとしている。

第3楽章「いなかの人々の楽しいつどい」。冒頭にホルンが高らかに鳴り響き、そのあとにチェロやヴィオラがメロディを奏でていく。やっとオケにエンジンがかかってきたのか、N響メンバーも湿度と楽器の調整になれてきたようだ。やっと本来のN響の力を発揮してきた。聴衆側も安心して聴いていられるようになってくる。やっぱしこうでなくちゃ。そして、「雷とあらし」の第4楽章に突入していく。外が雨だからというわけではないが、音がしっくりくる。

第5楽章「牧歌。あらしのあとの喜びと感謝」。来ました、来ました、N響ならではの低音部の響きと弦の一体感。木管も金管も雲の隙間から光を照らす光明を想像させるような音色を奏でる。アシュケナージならでのロマンティックな表現も伝わってくる。そして、最後は静かにして厳かな音色が会場内を覆っていた霞を消していった。

名演奏とまではとても言えないが、非常にまとまりのある演奏だった。パチパチパチ。

休憩時間を挟んで、交響曲第7番。最後の第4楽章だけは大いに盛り上がりましたが、それ以外はテキスト通りのごく普通の演奏。『N響★カンタビーレ』のときは若々しいN響を聴けたと書いたが、この日のN響は威厳こそ感じませんでしたが、我々は正統派なんだぞという妙なプライドを感じてしまった。今度はN響自体が妙なバリアーを作ってしまって、ちょっと残念でした。

前音楽監督のシャルル・デュトワは繊細でちょっとお洒落な音色をN響にもちこんだ。それに対して、アシュケナージはロマンティックにしてお茶目な音色をN響に求めてきたような気がする。日本のオケのほとんどはドイツ的な重厚な音色を志向している。N響もその一つであろう。ただ、この二人の音楽監督が持ち込んだ刺激は新鮮であり、ある意味挑発的だったのではないだろうか。次の音楽監督はまだ誰になるかわからないが、できれば今度は重厚にして明るく開放的な音色のサウンドをもった人になってもらいたい。そのためには北米のオケで指揮者として経験のある人を招聘してくれないかなぁ、と密かに期待している。

最後に、アシュケナージさん、楽しい音楽を本当にありがとうございました。ブラボー!

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