火曜日, 8月 14, 2007

神尾真由子 & 東京交響楽団

一昨日(12日)、ミューザ川崎で開かれている「サマーフェスタカワサキ」の東京交響楽団フィナーレコンサートへ行ってきました。指揮は大友直人。ヴァイオリンは先日のチャイコフスキー国際コンクールで優勝した神尾真由子。

演目(※はアンコール曲)
ベルリオーズ/劇的物語「ファウストの劫罰」より“ハンガリー行進曲”
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ペレグリ/クリザリッド
  〜休 憩〜
サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調
ラヴェル/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
※ビゼー/歌劇「カルメン」前奏曲

演目はすべてフランス人作曲家をフィーチャーしたものばかりで、「おフランスよ」というちょっと気位が高くてお上品な曲のオンパレード。(笑)で、演奏はというと、前半の3曲はすべてが凡庸。とにかく、東京交響楽団の弦がいただけない。私にとってオーケストラの最大の魅力である、弦の厚みや深みが全然伝わってこない。今回の演目はフルートなどの木管をクローズアップしていて、弦が活躍する場は少ない。それにしても、オケを支えるチェロやヴォオラの音色が頼りないのである。前半終了時の客席からの拍手もさほど大きくなく、拍手が止みそうになったので指揮者の大友直人があわてて舞台袖から出てくるぐらいであった。私も正直帰ろうかと思ったぐらいだったが、それでは何のために来たのかわからないので、休憩時にビールを一杯ひっかけて、後半に期待した。

神尾真由子は1986年大阪生まれの21歳。小学校4年生のときに第50回全日本学生音楽コンクール全国大会小学校部門で第1位を獲得。翌年わずか10歳でシャルル・デュトワ指揮のNHK交響楽団と共演してソリスト・デビュー。その後、数多くの国際コンクールに出場すると共に世界各国の有名オーケストラと共演している。使用楽器はサントリーが貸与している1727年製作アントニオ・ストラディヴァリ(ストラディヴァリウス)。

神尾は淡いピンク色のドレスで登場。今回がコンクール終了後初の演奏会。つまり結果的に凱旋公演になった。場内からは演奏前にもかかわらず割れんばかりの拍手。期待のほどが窺える。

第1楽章冒頭、太く低い音がミューザ川崎にサラウンドして響きわたる。う〜ん、楽器が違う。演奏が違う。ただ、コンクール終了後初の演奏会ということもあり、緊張しているせいか音に少しブレがある。それでも彼女の奏でる音色は観客を、そしてオケを完全に凌駕してしまう。やはり世界のコンクールを席巻した音色は違うと感心せざるをえない。

第2楽章。神尾のヴァイオリンは伸びと張りのある音をビシビシと奏でていく。それはノリのきいた着物や浴衣に袖を通したときに感じる、引き締まった気分を味わうかのような心地良さである。彼女は癒しの世界を描くではなく、張りつめた緊張した世界を築いていく。

第3楽章。今度は一転して神尾は大友直人の指揮と呼吸を合わせながら、オケと協調してサン=サーンスの世界を描いていく。見事です。とても21歳のうら若き女性とは思えない。彼女にとってサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲を今回は初めてとのこと。それでも、観客とオケを席巻した演奏だった。末恐ろしきヴァオリニストである。

それにしても、日本にはいったいどれだけの女性ヴァイオリニストの名手がいるのだろうか。諏訪内晶子、千住真理子、竹澤恭子、五嶋みどりなどといったキャリア15年以上のベテラン(失礼!)から、川久保賜紀、庄司紗矢香、そして神尾真由子という若手までいる。今や日本は世界に冠たる女性ヴァオリニスト王国になったようである。

さて、昨日最大の拾い物は東京交響楽団の首席フルートの甲藤さち。前半のドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』でもその演奏はひとり際立っていたが、後半のラヴェルの『ダフニスとクロエ』は完全に彼女の独壇場だった。彼女の奏でるフルートの音色は正確無比。加えて女性特有の優しく包容力のあるまろやかなな音色。ちょっとセクシーな音色でもある。この人は間違いなくフリーでも活動していける力量の持ち主なので、ぜひともいろいろなオケと共演してもらいたい。

というわけで、前半で帰らなくて正解の演奏会でした。おかげで、帰りも地元でビールを何杯も飲んでしまった。(笑)

神尾真由子
http://www.aspen.jp/artist/jp/mayuko_kamio.html

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