火曜日, 11月 13, 2012

美食日記「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」(広尾)


広尾駅から商店街を抜けて明治通りに向かう途中にある「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー a nu, retrouvez-vous」。「アニュ」とは「ありのままで」、「ルトゥルヴェ・ヴー」とは「また会いましょう」という意味。私のお気に入りの店である。なにぶん「私的ミシュランガイド」で3つ星をつけられる店はここと京都の炭火割烹「いふき」だけである。

店内は天井が高く開放感にあふれ、壁にはお洒落なパステル画がいくつも飾られている。各テーブルは作りに余裕があり、落ちついて食事ができる空間がしっかりと演出されている。それゆえに、美味しい料理とそれに伴うワインで時間も忘れ、話も弾んでしまうに違いない。私も今回は友人と一緒に時計の針を見ることもなく、4時間かけて料理とワインを堪能してしまった。

料理はいくつかのコースがあるが、今回は「ムニュー ドゥ コンバレゾン」という1つの食材を2つの調理法によって比較して食べられるコースを選び、それにちょっとわがままを言わせてもらい、その日の一品からうりぼうのローストを加えてもらった。また、ワインはそれぞれの料理にマッチするものを選んでもらい、少量ずつ飲ませてもらうようしてもらった。

まず最初の1品は、ここのお決まりのいくつか穴のあいたお皿にアミューズ3点をのせる。次にカニ料理を2点、続いてフォアグラ料理2点をいただく。そのあとに、キジと栗のヴルーテ、本日の鮮魚(真鯛)とほうれん草のクーリ、そして、うりぼうのローストと美味珍膳ならぬ美味愛膳の料理を食させてもらうが、そのコース料理は、少し解りにくい表現かもしれないが、ラヴェルの『亡き王女パヴァーヌ』と『ボレロ』を足して割ったような繊細にして先鋭的なオーケストレーションを味わっているような感すらあった。

そして、このお店で感心することは料理が美味しいだけでなく、そのサービスぶりもが特筆する。今回、私たちのテーブルを担当したお兄さんは私の甥っ子にそっくりで、思わず「お前、なんでここでバイトしているんだよ」と口から出そうになってしまったが(笑)、そのお兄さんの料理やワインの説明は非常に解りやすく、こちらからの質問にもしっかりと答えてくれて、カジュアルながらも丁寧な応対ぶりに、帰り際にちょっとチップを渡したくなったほどである。

「アニュ」は先日開店3周年を迎えたが、その姿勢は守りに入る感じなどはサラサラなく、創作意欲というか前へ進もうという向上心に満ち溢れている。また、お客へのもてなしの努力も怠っていない。いわゆるグランメゾンと言われる超高級フランス料理店ではないが、斬新な料理と心憎いサービスをこれだけ楽しめるお店はさほど多くないと思う。「私的ミシュランガイド」の3つ星はもちろんキープのままである。

ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー
http://www.restaurant-anu.com/jp/index.html

写真上:キジと栗のヴルーテ
  中:本日の鮮魚(真鯛)とほうれん草のクーリ
  下:うりぼうのロースト

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