水曜日, 12月 17, 2014

美食日記「日本料理 太月」(北青山)

冬場になると人気のある日本料理店はどこも予約がしずらくなる。11月末に人づてに聞いたいくつかのお店に電話するものの、その多くが「12月はすでに予約でいっぱいです」と断られる。そんななかで、オープンしてまだ1年4ヶ月なのに評判が高い北青山の「日本料理 太月」を予約することができた。

私は日本料理店を予約するとき必ずカウンター席をお願いする。というのも、カウンター席だとお店の店主や板前さん、時には女将さんと会話を楽しむことができ、ほんの少しではあるが料理の真髄を垣間見ることができるような気がするからだ。そして、今回は幸運にも店主である望月英雄さんの板前に座ることができ、同行者と共に下記の献立を、味覚・視覚だけでなく話を含めて多角的に楽しむことができた。ちなみにお店はカウンター8席と3つの個室で構成されている。

・先付 香箱蟹(せいこ蟹)の茶碗蒸し
・八寸 芽キャベツの海老真薯乗せ、三陸産牡蠣の時雨煮、菜の花黄身酢かけ、鱈の子の含め煮、いくらおろし合え、アワビのやわらか煮など
・お椀 若狭ぐじ(アカアマダイ)のお吸いもの
・お造り ヒラメ、さより、アオリイカ
・焼物 ノドグロの炭火焼き
・(別途注文) 自家製からすみ 半生仕上げ
・煮物 あん肝の付け焼き、京都丸大根 
・旬物 香住産の松葉蟹
・蒸物 鱈の白子のグラタン
・ご飯 九条ねぎと合鴨の土鍋とお漬物
・甘味 安納芋のスイートポテト、わらび餅、小豆のアイス

飲んだお酒は下記の通り
・生ビール プリミアムモルツ
・神奈川県山北町の丹沢山 隆 備前雄町無濾過生原酒
・香川県琴平町の悦凱陣 特別吟醸興無濾過生原酒
・カリフォルニア州ナパのケンゾーエステート りんどう

料理はどれもこれも店主のこだわりの素材選びと「巧」ともいうべき調理方法によって、日本料理の奥深い世界を探究している心意気が伝わるものばかりだった。

香箱蟹は松葉蟹のメスであるが、味はオスより少し濃厚。それをまろやかな味付けにしていただく。いきなり冬の日本海を望みたい気持ちにさせてくれる。次の八寸は海の幸を中心に季節の素材のオンパレード。アワビは歯ごたえの良い柔らかさ、海老真薯と芽キャベツの取り合わせも絶妙と、どれもこれも申し分のない一品で日本酒の肴としては贅沢極まりなかった。

  


お碗は若狭ぐじの上にキクラゲ入り蕪蒸しが乗り、それに三つ葉とゆずが添えられていて見た目も赤、白、茶(紫?)、緑、黄と美しい。ダシは薄味で塩も柔らかみのあるものを使っている気がする。お造りは青森のヒラメに松輪サバで有名な三浦半島の松輪港で獲れたさよりとアオリイカで、これを醤油もしくはカツオの酒盗で食べる。飲兵衛にとってはやはり酒盗の方が美味いように思えてしまう。(笑)

  


焼物はノドグロ(アカムツ)。炭火で焼けばどんな魚でも美味しくなるものだが、ノドグロは別格だ。別名「白身のトロ」と言われるだけあって、そのふんわり感とふくよかな味が美味である。これまた非のうちどころない味わいで飲兵衛を魅了させてくれる。すると、目の前ではまだ身がついた自家製カラスミを捌き始める。「これは献立には入っていないのですが」と。う〜ん、飲兵衛に対するずるい演出である。人参を目の前にぶら下げられている馬の心境だ。(笑)ということで、いただくことにする。からすみにうるさい同行者によると、からすみはまだ走りなのだが大きいのに粒がきめ細かく半生仕上げで繊細、と。ということで、彼女は「オイヒイ」を連呼していた。w

  


あん肝は少し濃厚な味わいでフォアグラと思い間違うような感じ。しかし、それを丸大根と菊菜(春菊)が和らげてくれて、日本酒にもワインにも合う申し分のない肴になってしまう。松葉ガニは兵庫県香住町で獲れたブランド蟹らしく、我々の前で解体される前には足にはタグがつけられていた。そして、その味はというと、みずみずしさは筆舌に尽くしがたく、先付の香箱蟹では日本海を望みたい気持ちにさせらたが、ここでは日本海に連れてこられたような気分になった。

  


鱈の白子のグラタンは、巻き海老、ゆりね、海老芋、アスパラ、粟麩などを盛って白子のしっとり感を味わう。これはワインとの相性は抜群だった。九条ねぎと合鴨のご飯は、合鴨が細かいミンチ=そぼろ状になっていて、九条ネギの甘みと溶け合い上品な味を醸し出している。これならば、思わず自宅で九条ネギか万能ネギを使って炊き込みご飯ができるかなと思ってしまう。しかし、考えてみれば土鍋がない。(> <)


  


飲んだお酒は、丹沢山 隆はお米の香りをしっかりした主張した日本酒という感じ。一方、悦凱陣はまろやかな甘みとスッキリした酸味のある日本酒。りんどうはしなやかにして渋みと程よいスモーク感があった。ケンゾーエステートのワインは値の張るものが多いが、ここでは小売価格とほぼ同額で提供でされていてお得であった。

最近、青山界隈には数多くの日本料理の名店ができて群雄割拠の様相になりつつあるが、こちらの店は凛とした姿勢で本格派日本料理の道を歩み続けそうである。素材選びのこだわりと繊細さ、かつまた奥深い味わいの仕立ては白眉である。美味しいお店を発見した喜びと共に、次はいつまた訪ねようかと悩まざるをえないのがちとつらい。(笑)

日本料理 太月懐石・会席料理 / 表参道駅明治神宮前駅渋谷駅

夜総合点★★★★★ 5.0



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