水曜日, 3月 18, 2015

舞台『藪原検校』を観る

昨日(17日)世田谷パブリックシアターで上演されている舞台『藪原検校』(作:井上ひさし)を観てきた。演出は栗山民也。配役は下記の通り。

 杉の市(後の二代目藪原検校):野村萬斎
 お市 ほか         :中越典子
 語り手役の盲太夫      :山西 惇
 将軍補佐役松平定信 ほか  :大鷹明良
 兇状持ちの倉吉 ほか    :酒向 芳
 塩釜座頭・琴の市 ほか   :春海四方
 魚売り七兵衛の女房 ほか  :明星真由美
 強請られる寡婦 ほか    :家塚敦子
 強請られる寡婦の娘 ほか  :山﨑 薫
 魚売り七兵衛 ほか     :辻 萬長
 ギター奏者         :千葉伸彦

『藪原検校』は70余本ある井上ひさしの戯曲のなかでも最高傑作の呼び声も高い。私も数多くのこまつ座の芝居を観劇したり、井上ひさしの本を読んでいるが『藪原検校』『雨』『化粧』の3本がお気に入りである。なかでも『藪原検校』は1973年の西武劇場での初演を観ていることもあり、思い出も思い入れも深い。

物語は産まれながらにして盲目、そして悪漢になっていく杉の市の28歳の生涯を描く。江戸享保年間、魚売りの七兵衛(辻萬長)は女房(明星真由美)のお産の費用を工面するために、盲人を殺して金を奪う。ところ、生まれた赤ん坊は盲目で後の杉の市(野村萬斎)だった。その杉の市も師匠である琴の市(春海四方)やその女房(中越典子)を殺してしまう。そして、江戸に上がった後も悪漢ぶりを発揮して、最後は師匠を殺し、若干27歳の若さで検校の座につく・・・。

演出の栗山民也は初演の演出を手がけた木村光一の弟子にあたり、おそらく初演時にも舞台に関わっていたのではないだろうか。それゆえに木村演出を彷彿させるものがある。ただ、全体的に暗黒的モノクローム感は漂わせず、意外に色彩感のある演出という感じに見受けられた。それは、主役の野村萬斎が陰湿な悪漢という感じではなく軽快な悪漢という演技のせいもあるのかもしれない。そのためか、舞台は意外に飄々と展開していく。

演劇は時代を映す鏡のひとつでもあるが、この芝居を見ていると何もかもがパソコンやスマホで終わってしまい、川崎の少年殺害事件のように簡単に人を殺してしまう現代社会を表しているようにも見える。また、金にものをいわせて検校の座につく主人公を見ると、今なお続く「政治とカネ」の問題も思いうかべてしまう。やはり井上ひさしの時代を観る目は鋭い。

出演者では語り部を演じた山西惇、重要な役回りである魚売り七兵衛、塙保己市、首斬役人などを演じた辻萬長、8役を演じわけた大鷹明良ら男優陣の健闘が光る。藪原検校はこれまでに初演の木村演出では高橋長英が、新橋演舞場では中村勘九郎(後の勘三郎)が、蜷川幸雄演出では古田新太が、そして栗山演出では野村萬斎が演じている。次は誰が演じるのであろうか。

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