土曜日, 3月 28, 2015

『編笠十兵衛』を読む

『雲霧仁左衛門』に続いて上下巻の長編『編笠十兵衛』(作:池波正太郎)を読んだ。

この本は忠臣蔵外伝である。忠臣蔵外伝というのは四谷怪談をはじめいくつもあるが、これはちょっと奇妙な構図の外伝だ。というのも、主人公の月森十兵衛は幕府隠密でありながら赤穂浪士を助勢するというものなである。

元禄年間、江戸城・松の廊下での浅野内匠頭が吉良上野介に刃傷沙汰を起こす。それに対する徳川綱吉の喧嘩両成敗ではない誤った裁断を正すために、幕府の“密命”をおびた旗本の中根正冬の家人・月森十兵衛はいろいろ画策をして赤穂浪士の討ち入り準備の手助けを行う。その間に十兵衛も吉良家の警護をする浪人たちと何度か死闘を繰り広げる。

話はざっとこんな感じである。で、面白いかというとさほどではない。池波正太郎の流麗な文章のためにスラスラと読めるが、主人公の心のうちがうまく描かれているとは思えないし、浅野家側の奥田孫太夫や吉良家側の浪人たちの描写も甘い感じがする。結局のところ、幕府隠密が赤穂浪士側に立つという滑稽なストーリーを重視しただけの物語なのかもしれない。ただ、この話はドラマにすればもっと細部を描くことができそうなので、いつの日にかぜひともBS時代劇に登場してもらいたい。

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