昭和30年代、私がまだ子供の頃、近くの家々には桜の木がありました。当時はどこの家も敷地が最低でも70坪はあり、庭にはいろいろな木々が植わっていました。私の家も敷地100坪の家で椿、木蓮、桜など四季おりおりに花が咲く木がありました。今となっては豪邸のような家なのかもしれませんが、昔はそれがごく一般的な家でした。
桜は開花、葉桜、紅葉と三度楽しめるとよくいいますが、うちにあった桜はそれに加えて葉桜のあとに毛虫というお邪魔虫の楽しみもありました。今となっては毛虫なんて都会ではなかなかお目にかかれません。それだけ当時は都会でも昆虫が住める環境があり、強力な農薬や殺虫剤というものが普及していなかったのです。ですから、桜の木に毛虫が発生すると、もう大変でした。家のなかに侵入するものまで出てきます。それを防ぐために、毎年DDTのような白い粉を桜の木にシュッシュッと撒いたりしたことを憶えています。
しかし、昭和も50年代になると桜の木はめっきり少なくなりました。その最大の理由は相続による土地の切り売りによるものです。また、車のガレージにするために木々を切った家も多かったです。そして、バブル期になると建て替え需要が増えて、多くの家が木造建築から鉄筋3階建てのアパートを兼ねた建物になっていきました。その際、建物は建ぺい率いっぱいいっぱいに建てるために、庭は次第に猫の額の広さになっていってしまいました。
テレビとかで一軒家に住んでいると、それは凄いですね。豪邸にお住まいなんですね。などという輩がいるが、本当は家というのは一軒家が普通であり、マンションなんていうのがおかしいのである。もし、一軒家が豪邸とひがむなら、東京以外のところに住めばいい。いくらでも一軒家はあるのだから。東京生まれの東京育ちの私に言わせてもらえれば、あまりにも東京に人が多すぎるから、桜の木もなくなれば毛虫もいなくなるのだ、と言いたい。
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