火曜日, 4月 10, 2007

東京バレエ団『白鳥の湖』(4/9公演)

チャイコフスキーの三大バレエのひとつ『白鳥の湖』。これまでにボリショイバレエ団、アメリカン・バレエ・シアターなどで何度も見ている演目である。しかし、何度見ても不思議と新鮮な余韻を残してくれる。それだけ傑作であり、逆にそれを乗り越える作品がなかなか出来ないという現実もある。まあ、それが古典たるものだが。さて、そんなことに関係なく、今回の公演のお目当ては主役のオデットを演じるポリーナ・セミオノワである。私のご贔屓ダンサー兼振付師、ウラジーミル・マラーホフの秘蔵っ子として活躍する若手プリマドンナである。

彼女はボリショイ・バレエ学校在学中にモスクワ国際コンクールで金賞を受賞。18歳にしてベルリン国立バレエ団のプリンシパルを務めている。古典バレエからモダンバレエまでなんでもこなす弱冠22歳の若手のホープで世界各国からの客演のオファーが引きもきらないという。

さて、その彼女の演技であるが、いや〜上手いです。華麗です。綺麗です。どんな美辞麗句を上げても追いつかないほど上手いです。言葉は悪いが、ヤバイです。(笑)彼女はもう存在するだけで舞っているようなのです。これまで数多くのプリマドンナを見てきましたが、若手では間違いなく最高だと思います。私の知り合いの某大学教授など、3年前に初来日したときから大絶賛していましたが、その目に狂いはありませんでした。脱帽です。まあ、どれぐらい上手いかは自分の目で確認してほしいです。公演は今日と明日とまだ二回残っていますので。

ポリーナ・セミオノワ以外にもいくつかの収穫がありました。第一幕だけしか登場しなかったが小出領子の可憐さに磨きがかかったこと、道化を演じた大島正樹の表現力が前回の『中国の不思議な役人』以上にパワーアップしたことなどある。また、四羽の白鳥を演じたアンサンブルの踊りも良かった。二十数羽の白鳥たちが膝をついてその姿を表すときの演技なども、ホンモノの白鳥を思い浮かべるほどの表現をしていた。

最後に今回の公演でちょっと驚いたのは、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏が良かったことである。これは指揮者のアレクサンドル・ソトニコフの力によるものが大きいかもしれないが、演目のなかでソロを務めたハープ、オーボエ、ヴァイオリンの音色は特筆すべきものが多かった。私は2階サイド席にいたこともあって、終演後は舞台上のダンサーに拍手をおくりながらも、オーケストラピットに目を向けていたのだが、ソトニコフはハープとオーボエらの奏者に拍手をおくっていた。また、舞台上で花束をもらった後も、一輪をハープのお姉さんにもう一輪を誰かに舞台上から投げ入れていた。彼にとってもおそらく満足な演奏だったに違いない。

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