木曜日, 8月 25, 2022

一蔵、市弥、小辰の三人集 二ツ目ラストラン

月曜日(22日)は日本橋社会教育会館で行われた春風亭一蔵、柳亭市弥、入船亭小辰による「新版三人集」を聞きに行った。これが二つ目としては最後の会。

最初のトークは全員私服で登場。というのも、3人とも開演時間を15分間違えていて、それを前座の「気が利かない」せいにする。トークには九州でトラックの荷台に高座を設けて頑張っている橘家文太と、これから行われる3人の襲名披露興行の総番頭を務める古今亭始が登場。前座には仕打ちはするが、頑張っている二ツ目の後輩は観客に優しいという3人だった。

で、出演者と演目は下記の通り。

柳亭市助  「狸の鯉」
入船亭小辰 「いかけや」
古今亭始  「首ったけ」
 〜 仲入り 〜
春風亭一蔵 「天災」
柳亭市弥  「千早ふる」
 〜かっぽれ〜

柳亭市助は柳亭市馬の11番目の弟子。開口一番「気が利かない前座です」と挨拶した後本題へ。「狸の鯉」は狸の恩返しがあだになるという噺だが、市助は淀みもなくそつなくこなす。気が利かない先輩に気遣いなどする必要はない。w

マクラは高校時代に自分の学校(日大豊山)が甲子園に出場したので甲子園に応援に行ったがずっと寝ていたという話。「いかけや」(鋳掛屋)とは路上で鍋や釜などの鋳物製品の修理・修繕を行う仕事。昭和初期まではあった職業。噺はその鋳掛屋を悪ガキどもがからかい、その後に鰻屋へ行って看板を「ヘビ屋」にするなどイタズラをするという悪ガキの噺。この噺、あまり聞く機会はないが入船亭小辰に実にぴったり。悪ガキのこまっしゃくれた言い方がいい。ぜひとも十八番にしてもらいたい。

古今亭始は古今亭志ん輔の弟子。志ん輔は3代目古今亭志ん朝の弟子なので、始は志ん朝の孫弟子となる。ただ、始は現在38歳なので20年前に亡くなった名人のことは知らないかもしれない。マクラで3人の襲名興行の総番頭の話を聞いた時にはびっくりしたと。3人の一門(春風亭一朝一門、入船亭扇辰一門、柳亭一門)とは関係がないのにと・・・。「首ったけ」は吉原の花魁・紅梅に首ったけの男の噺。話の中で東洲斎写楽の役者絵「奴江戸兵衛」の形態模写するなどウィットにとんだ話し方をする。

春風亭一蔵のマクラがめちゃくちゃにおかしかった。披露興行が近くなり色々なところに挨拶状を出しているのだが、自分は市弥や小辰と違って字を書くのは下手だし、慣れていない、と。しかし、「襲名披露前はとにかく宛名書きが大変のよ」と嘆く。なかでも「ワタナベさん」のナベの字、いったいどうなっているのと。これには私も大いにうなづいてしまった。そして、サイトウさんのサイの字もどうにかしてよ、と。分かります分かります。まったくどうにかしてほしい。ということで、本題の「天災」は割愛。w

トリは一蔵曰く「10年の想いを込めて」柳亭市弥が務める。マクラは襲名にするにあたってなぜ小燕枝になったかの経緯を披露(告白?)。「千早ふる」は在原業平の有名な和歌であるが、落語はこれを曲解する。この日の市弥は弾けていた。人によっては空回りしているように見えるかもしれないが、今回はしっかり「10年の想いを込めて」会場を沸かせてくれた。そして、最後は「かっぽれ」を踊る。途中から古今亭始も加わり、三人集最後の会を飾った。

それにしても3人というのはいいものだ。落語には二人会というのは星の数ほどあるが、三人会は非常に少ない。お笑い3人組、三ばか大将などお笑いには3という数字は吉なような気がする。三人集も今回が二ツ目最後になったが、真打になっても1年に2〜3回は続けてもらいたい。



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