土曜日, 7月 18, 2009

映画『劒岳 点の記』を観る

平日の昼、渋谷東映の館内はかなりの人。年配者の数が圧倒的に多く、若者の姿はチラホラ程度。高齢者向け映画なのかもしれない。

映画は新田次郎の原作をほぼ忠実に描いたようであり、監督が木村大作という日本を代表するカメラマンだけにその映像美は“ぐの音も出ない”というぐらい凄い。しかしながら、残念なことに映画としの物語性の構成力や役者陣の演技力に関してはかなりの不満が残った。

まず物語性だが、陸軍測量部と日本山岳会の対比が不鮮明だし、陸軍上層部の関与も軟弱で、結局は誰も死なず、誰も悪者にならず、軍への批判も玉虫色に終えてしまう、という中途半端な物語になっている。もう少し主義主張を明確にしてほしかった。

次に演技力に関してだが、いくら監督がカメラマン出身だからといって演技指導を怠っているようでは映画ではない。香川照之ひとりだけが完全に役に入りこんでいるのに対して、淺野忠信はまあまあとしても、松田龍平、蟹江一平、新井浩文といった若手陣が自分の役をほとんどこなしていない。というより理解していない。これでは蛍雪次朗、モロ諸岡ら中堅陣のサポートが無になってしまう。また、いつもながらの役回りの仲村トオルや小沢征悦も、役者としとの自分の殻を打ち破ってほしい。

映画『劒岳 点の記』は木村大作が監督だったからこそ映画になったのかもしれない。そして、映画は十二分に観る価値はあると思うが、ただ、映画としてさほど面白いとは思わない。

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