水曜日, 1月 22, 2014

美食日記「くろす」(神楽坂)

神楽坂・毘沙門天前の趣のある石畳の兵庫横丁を下りていき、軽子坂とクロスした近くにある日本料理店「くろす」。ハイアットリ-ジェンシー東京やリッツ・カールトン東京の和食料理長を務めた黒須浩之さんが2年前に開いたお店。店内は1階に5席のカウンターと2階に8〜10人が入る部屋があるだけで非常に小ぢんまりとしている。

料理はあらかじめおまかせコースを頼む。まず最初にカブの先付が出されてきたが、その味が良かったのもさることながら、関心させられたのは器。蓋の裏には今年の干支である午年にちなみ「よろずの福を連れてくる」という左馬の文字(う〜ん、よく読めない w)が書かれていた。ちなみに私も同行者も午年生まれである。偶然だが心憎い気配りだ。w 次に出てきた八寸が超美味。特に串刺しされた赤こんにゃく、キュウリ、ウニ入り鶉は、色合いも素晴らしく新年のお目出度さを表しているようであった。その後も、蟹しんじょうのお椀、キャビア乗せのヒラメ、鯛のお刺身などが次々と登場。その盛りつけは常に立体的で繊細かつ華麗である。加えて、出てくる食器はすべて素晴らしいものばかりで目を奪われる。そして、その器を語るときの黒須さんの目は輝いていて、かなりのこだわりがありそうである。

こうした美味しい料理が次から次へと出てくると、当然ながらお酒もすすんでしまう。すると、カウンターの奥には有田焼や織部焼の鮮やかな徳利が並んでいるではないか。加えて、カウンター横には立派な熱燗器があるではないか。となると、ここは久しぶりにぬる燗ということになり、緑の織部焼の徳利で山形の銘酒『上喜元』を飲むことにする。寒い日の燗は格別である。

そして、メインの料理に出てきたのが金柑が添えられた鰹の照焼きと、茄子が添えられた熊本のブランド牛「和王」の薄揚げは共に絶品だった。特に「和王」は芳醇な味わいのお肉で、同行者はいきなり「これはワイン!」と言って、カリフォルニアのケンゾー・エステイト・ワイナリーを頼む。ワインは確かにまろやかな肉質にはピッタリであったが、お値段が少し高いかな・・・。

締めはここのスペシャリテというか看板料理の鯛めし。これがもう絶品、絶品、大絶品。甘い香りが漂い、ふっくらにして、つややかな色。その味は薄味にしてトロけるような感覚。これはもうご飯にしてご飯にあらず、というか、ご飯の範疇を逸しているご飯である。これほど美味しい鯛めしは今後おそらくお目にかかれることはないだろうと思うぐらいだった。また行きたいお店が一軒増えてしまった。

最後に少し話がずれるかもしれないが、女性が一人で正統派な日本料理を食べに行くのはそれなりに勇気がいると思う。それは予算的なこともあるし、またそのお店の雰囲気にも馴染めるかどうかという問題もある。「ひとりフレンチ」という言葉はあるが、女性の「ひとり日本料理」という言葉は聞いたことがない。そうした意味を考えると、ここはお値段は少し張るものの「女子ひとり日本料理」「女子二人日本料理」に向いているお店ではないだろうか。

くろす
http://www.kagurazaka-x.com

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