木曜日, 7月 31, 2014

若気の至りの賭け

高校生のときだったか、それとも遊学中に帰国したときだったか、とにかくいつだったかよく覚えてないが、ある意味“若気の至り”の賭けをした。

中学時代の友人たちと麻雀をやっていたとき、彼は何故かいきなりメンツに「誰が最後まで結婚しないか、賭けをしないか」と持ちかけた。私以外の2人はあまりにも馬鹿馬鹿しい話なので、まったく乗り気でなく素っ気なかった。そこで、仕方なく私だけが「じゃあ、応じようではないか」となった。別に勝算があったわけではないが、当時の私はいずれ海外生活でもして、結婚するのはみんなより遅くなるだろうなあ、と漠然と思っていたので、軽い気持ちで賭けに応じた。ということで、私と彼だけのどうでもいい賭けは成立した。

それから何年経ったのか解らないが、20代後半に彼は結婚した。あのときのメンツ4人のなかで一番早い結婚であった。もちろん私も結婚式に参加して祝福した。そして、1ヶ月後に思いもよらず、掛け金であった5万円が普通郵便で送られてきた。「賭けに負けたよ」といった文面などはなく、無造作に聖徳太子が5枚入っているだけだった。そのときは、海外に旅に行く計画をしていたときだったので「超ラッキー〜」といただくことにした。ただし、いずれ私が結婚するときには返すつもりではいた。

そんな彼が骨髄腫で先日他界した。1ヶ月前に友人らと見舞いに行ったときに、私は5万円を返すつもりでいたが、その話をする前に彼はすでに覚悟をしていてか「次に会うのは俺の葬式だな」と言い、最後まで私は話を切り出すことができなかった。おそらくその話をしたところで、少し頑なな彼は間違いなく「そんな金はいらないよ」と言いそうでもあった。

若気の至りの賭けがトラウマになったせいかどうか解らないが、私はずっと結婚することなく今日までいる。一方、彼はしっかりした奥さんと3人の子供や孫にも恵まれた。今思えば、あの賭けは自分自身への結婚願望であり意気込みであり、それこそ賭けだったのかもしれない。

いま私はどうやって彼に5万円を返すかを思案中でいる。

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