土曜日, 7月 26, 2014

美食日記「くろいわ」(恵比寿)

昨年1月以来だから約1年半ぶりの訪問。今回は高齢の母親を同伴(一応父親の命日の法要という名目)することと、私が鱧料理を食べたいというちょっとしたリクエストを事前にしておいた。

まず最初にウエルカムドリンクではないが、暑さバテ解消という意味合いもあるのだろうか、ブドウの実と塩の入った冷たいお茶をいただく。その後に、下記のような料理が出されてきた。もし献立が間違っていたらごめんなさい。

・先付け 夏野菜を雲丹黄身酢
・お椀  鮑と白キクラゲの鱧出し
・揚物  白扇揚げ(茄子、牛蒡、トマト)
・お造り 鱧とタコ、大徳寺納豆
・焼き物 アイナメとゴーヤ
・八寸  すっぽんのゼリー、からすみ白瓜、夏野菜の鱧ゼリー寄せ、自家製豆腐と海鼠腸
・冷し物 ダツと茗荷の琥珀餡
・煮物  牛ロースとお野菜
・お食事 炊きたて中(?)ご飯、炊きたてご飯、おこげの磯辺焼き、ジャコ飯 or 卵かけご飯
     (おつけもの、みそ汁)
・お菓子 和菓子
・お土産 おにぎり

 

前回訪れたとき同様、いやそれ以上にどの料理も美味しかった。そして、どれもこれもがお酒がすすみ困ったものである。(笑)で、飲んだお酒は前回同様に、料理に合うようにお任せ。始めは夏向けのさっぱりした『鶴齢』(新潟)、続いてお米の味がしっかり醸し出された『開運』(静岡)、そしてしっとり感の漂う『而今』(三重)と、私が「比較的有名どころのお酒ですね」と店主の黒岩さんに言うと、彼はここぞとばかりに『益荒男』(秋上がり)をもってきてくれた。

『益荒男』は日本一の杜氏とも云われる農口尚彦さんが造るお酒で、店主が出してくれたものは昨年出荷の「秋上がり」ではなく一作年出荷の、つまり約2年も熟成されたお酒なのである。これには日本酒好きの私も同行(同好)の女子も唸ざるをえなかった。

 

さて、料理であるがやはり印象に残ったのはリクエストしておいた鱧である。お椀では鱧の出しに白キクラゲのシャキシャキ感と鮑のシトシト感という不協和音的な食感がなんとも言えなく、いまでもあのときの感覚が舌と顎に残っている感じだ。お造りでは鱧も美味しかったが、一緒に和えてあったタコの卵に仄かなコクがあり珍味だった。そして、鱧のゼリー寄せも何種類かの野菜とマッチしていて大変おいしく口のなか全体を満喫させたもらった。これに骨せんべいがあれば、と言うのは少し贅沢だろうか・・・。(笑)他の料理のなかでは白扇揚げがおしゃれで、茄子にケシの実をまぶしたものとトマトが絶品だった。

 

そして「くろいわ」名物の土鍋で炊かれたご飯が、前回訪れたときより数倍進化していた。最初は炊きたて中の少し芯が残っている硬め目を軽く、次に火を止めた瞬間の少し柔らか目を一膳、そしておこげを海苔で挟んで食べる磯辺焼き風を、最後は蒸したご飯をジャコ飯(もしくは卵かけ飯)でいただく。これまで数多くの日本料理店に行っているが、このように4種類のご飯の食べ方をしたのは初めてだ。これに、お土産におむすびを頂いたので実際は5種類になる。

 

最後は余談になるかもしれないが、グルメのひとつに器を楽しむということがある。フレンチやイタリアンだと磁器やグラスの素晴らしい食器を楽しむことができる。また、日本料理では陶器、磁器、切子ガラスなど日本人に親しみのある器を味わうことができる。その意味において「くろいわ」は器に関してはかなりのこだわりがあるところで、近くに倉庫代わりに器のためだけの部屋を借りていて、毎月食器を入れ替えているという。このようなことは他店も行っていると思うが、ただ、ここでは店主および女将さんの器に関する執念というか執着心が料理と共に器から伝わってきて甚く感服する。器に興味のない人にはおすすめできないが、料理やお酒と共に器を楽しみたい人には絶対におすすめの店である。

 


恵比寿 くろいわ懐石・会席料理 / 恵比寿駅広尾駅

夜総合点★★★★★ 5.0



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