月曜日, 3月 07, 2016

東横落語会〜其の十三〜

昨日(13日)は渋谷ヒカリエホールBで開かれた「東横落語会〜其の十三〜」を聞いてきた。出演者および演目は下記の通り。

柳亭こみち  「四段目」
古今亭志ん輔 「小言幸兵衛」
柳家権太楼  「幽霊そば」
 〜 仲入り 〜
柳家さん喬  「柳田格之進」

開口一番の柳亭こみちは柳亭燕路の弟子。現在東京には女性落語家は20人前後いるらしいが、こみちもその数少ない一人で現在二ツ目。「四段目」は芝居好きの小僧・定吉とその主人との滑稽噺。こみちは女流ということもあり、小僧の定吉を演じる時はとても活き活きしている。これで主人の演じ方にもう少し厚みというか深みが加われば間違いなく真打だろう。頑張ってもらいたい。

古今亭志ん輔は前日飲み過ぎたらしく半ば二日酔い状態で登場。枕もその酔った噺だったが、それも早々に切り上げて本題に入る。これでは呂律が回らないのではかと危惧したら、酔った勢いなのか、幸兵衛さんの小言が速射砲のように次から次へと繰り広げられる。これには場内唖然、そして爆笑。時に二日酔いも落語には効果があることがあるようだ。今まで聞いた志ん輔のなかでは一番面白かった。

柳家権太楼は来年70歳になるという。そして、70になると信用金庫から浅草演芸ホールの入場券がもらえる特典がつくという枕。もちろん「そんなものいらない!」に場内大爆笑。で、本題に入ると大熱演。初めて聞いた「幽霊そば」だが、この演目は2006年落語協会台本募集で優秀賞に選ばれた作品で、今や権太楼が十八番にしている。新作といっても古典にも通じる風情を残している上に「時そば」や「お菊の皿」などを上手くパロ(パク?)っていたりしてとにかく面白可笑しい。

柳家さん喬は登場する前に前座が座布団脇にお茶を用意する。そして、登場するなり枕もなくいきなり本題に突入。「柳田格之進」は落語の演目のなかでも大ネタの一つ。45分もかかる噺のために持ち時間が決まっている定席ではほとんど掛かることがない。内容は囲碁仲間である柳田格之進と萬屋源兵衛の50両にまつわる人情噺である。さん喬は例によってしっとりと江戸の光景が見えるように語っていく。本当にこの人の情景描写は惚れ惚れする。天下一品だ。加えて、浪人ながらも武士の矜持と商人の腰の低さ(したたかさ)を見事に演じ分ける。今や人情噺を演じる落語家で彼の右に出る者はいないのではないだろうか。そして、彼の着物姿とその所作はいつもながら美しい。


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