月曜日, 3月 25, 2013

さん喬、権太楼、雲助の大吟醸三人会


一昨日(23日)渋谷区文化総合センター大和田で開かれた毎日新聞落語会「渋谷に福来る」大吟醸三人会を聞いてきた。出演者と演目は下記の通り。

さん喬、権太楼、雲助 鼎談(ていだん)
柳亭市助  『一目上り』
柳家さん喬 『幾代餅』
 〜 仲入り 〜
柳家権太楼 『猫の災難』
五街道雲助 『花見の仇討』

柳家さん喬、柳家権太楼、五街道雲助の3人は年齢的にすでに60台半ばだが、現在の落語界でもっとも脂の乗った噺家たちである。その3人が「鼎談」と題して、最初に憧れた女性(芸能人)は?というたわいない座談会を行う。若林くんと呼ばれた雲助師匠は恵とも子、梅原くんとは呼ばれなかったが権太楼師匠は九重佑三子、稲葉くんと呼ばれたさん喬師匠は十朱幸代だった。そして、3人とも古今亭菊之丞がNHKの藤井彩子アナと結婚したことには驚いたと。(笑)

前座の柳亭市助は柳亭市馬(落語協会副会長)の弟子。芸風というかその語り口は師匠に似ていてとても落ち着いている。

柳家さん喬の廓噺は絶品である。先日、テレビのTBS落語研究会で見た『雪の瀬川(松葉屋瀬川)』では吉原や雪景色の描写が素晴らしく、まるで観客を江戸時代に連れていくような語り口で大変な驚き覚えた。そして、今回の『幾代餅』でも花魁と清蔵の掛け合いの場面や、最後に花魁が清蔵のもとを訪れるところの描写などは市井ものの時代劇を見ているかのようで、そのイメージを作り上げていく話芸は尋常でないと感銘をうけた。以前、古今亭志ん朝の落語を聞いたときも、その描写力には驚かされことがあるが、今やさん喬もその域に達しているのではないだろうか。名人である。

柳家権太楼は爆笑王である。お酒を飲む様は飲兵衛の私としては頭が痛いところもあるが、そのデフォルメされた様はおかしくてならない。また猫に対する言い訳の滑稽の様も申し分ない。師匠(柳家小さん)譲りともいえる明るく屈託のない噺を聞いていると、つくづく落語は楽しいなあと思わせてくれる。この人も名人だ。

五街道雲助は飄々とした語り口で、古典落語の正統派の雄と呼ばれている。『花見の仇討』はお花見で仇討ちの劇を演じて目立とうする4人の話だが、雲助はその4人を見事に演じ分けると共に、ちょっと複雑になっていく展開の解説も上手く加えていく。冒頭の雑談で、昨年の芸術選奨賞を受賞した権太楼師匠が、今年受賞したさん喬師匠に「おめでとう」と言ったときに、さん喬師匠は「来年は雲助さんです」と言っていたが、それもあながち嘘にはならないだろう。今の雲助師匠のひょうきんな噺を聞かないのはもったいない。もちろん、この人も名人である。

最後に来年も「渋谷に福来る」公演が催されるならば、ぜひともまた三人会を行ってほしい。ただ、できれば正午開演でなくもう少し遅くに。そうでないと最初の鼎談で眠気眼だった雲助師匠が可哀想だ。(笑)

※写真上は渋谷区文化総合センター大和田に向かうさくら通りの桜。

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