月曜日, 11月 12, 2007

『ちりとてちん』が底抜けに面白い

いま放送されているNHK朝の連続テレビ小説(朝ドラ)『ちりとてちん』が面白い。

最近は民放のテレビドラマをめっきり見なくなってしまったが、過去にドラマに関する本を何冊か編集および執筆した者としては、朝ドラと大河は最低でも見るようにしている。まあ、他にも話題性のあるドラマは押さえているつもりでいるのだが。

朝ドラはいつの頃か知らないが、4月スタートを東京製作、10月スタートを大阪製作とするようになった。しかし、90年代の大阪製作の朝ドラは製作能力が弱く、東京製作と大阪製作では視聴率にかなり差が生じた。このために90年代半ばより、東京からNHKのなかでも凄腕のプロデューサーを大阪に移動させるなどテコ入れを図った。そして、99年秋放送の『あすか』あたりから大阪製作の朝ドラが面白くなり、逆に東京製作の方が『ちゅらさん』(01年春)と『純情きらり』(06年春)を除いて面白くなくなってしまった。特に前回の『どんと晴れ』や『天花』(04年春)のように無惨な作品を東京が製作している。

で、『ちりとてちん』のどこが面白いかといえば、いまのところ全てが面白い。

ヒロインを演じる貫地谷しほりの演技力は表情豊かで、一見コメディアンヌそうなのだが一本芯の通った演技も堂にいっている。最近のヒロイン(藤山直美は除く)では抜群の演技力である。加えて、脇を締める小浜の家族や飲み屋の連中たちもいい。なかでも光っているは和久井映見と松尾貴史の二人である。和久井映見もいきなり18歳の母親とは可哀想な気もするが、彼女のすっとんきょな母親は笑わせられるばかりでなく、凄さを見せつけられる。松尾貴史は普段のアクの強いキャラクターを完全に殺して、落語好きの床屋さんを地味に演じながらもドラマをまとめている。他にも京本政樹のダメ男ぶりや、江波杏子のおばあさん、きまじめ美人の佐藤めぐみ、頼もしい友人役の宮嶋麻衣などが魅力的である。

そして、このドラマがもっとも面白い最大の理由は藤本有紀の脚本だ。私はこの藤本有紀という人をよく知らない。『二千年の恋』とか『花より男子』などの脚本を書いているのだが、私はこれらのドラマを観たことがなかった。なのでどうだかよく解らないが、彼女の描くストーリーがとても新鮮でならない。なかでも、和久井映見演じる母親が本来は宅配便で送るものを、そのまま割烹着姿で抱えて大阪まで来てしまうなどといったマンガチックなことを書いていたり、つっぱりの弟弟子が飼っていた九官鳥に落語の稽古をしていたことを解らせてしまうところなど、ドラマならでの面白さを脚本のあちらこちらに入れている。また、これは誰もが言うであろうが、落語を題材にした劇中劇も非常に面白い。

ドラマではこれからヒロインの貫地谷しほりが渡瀬恒彦演じる徒然亭草若に入門して、落語家の道を進んでいく。今後は大阪を舞台に展開していくだろうが、あのユニークな小浜の家族や友人2人たちの新たなる登場と活躍も期待している。

ちなみに、「ちりとてちん」とは上方落語の演目で、東京では「酢豆腐」と言う。

「ちりとてちん」の視聴率とBSの普及率
http://k21komatsu.blogspot.com/2008/04/blog-post_03.html

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